誰でも気軽に始められるドールライフを提案する連載第2回。連載第1回「そうだ、ドール買おう。」球体関節人形(スーパードルフィー)からはじめるドール道のすすめ」ではいきなりディープかつお値段高めなSD(スーパードルフィー)を取り上げましたが、他にも魅力的なドールは各メーカーから発売されています。
1体お迎えすると仲間を呼ぶという人形のマドハンド的性質は多くのドールオーナーが語るところ。筆者もうっかり連載途中で20体から22体に増えましたが、そういうことを入門者が聞けばなおさら初めてお迎えする子は慎重に決めたくなりますよね。
それが無駄な悩みだったと分かる日はそう遠くないのですが、ともあれ以下に各メーカー別のドールラインナップと販売形式をご紹介。これをカタログにお気に入りの子をじっくり探していただければ幸いです。(文|寺田龍太)
アゾンインターナショナル
「ドールはグラスアイが怖い」と足踏み中の人にオススメなのが、プリントアイタイプのアゾンオリジナルドール。50cm級の1/3サイズ(ELLEN、Black Raven、Happiness Clover)、25cm前後の1/6サイズ(えっくす☆きゅーと、サアラズ ア・ラ・モード)、更に小さな1/12サイズ(リルフェアリー、ピコえっくす☆きゅーと、アサルトリリィ)のオリジナルシリーズを持ち、月刊アゾンとあだ名されるほど旺盛に新作を発表。
『ラブライブ!』ほかアニメ作品のキャラクタードールも展開しており、フィギュアの延長としても手を出しやすい(筆者の知人も『ガリレイドンナ』のドールを買いました)。
公式サイトより、1/6ドールシリーズ「えっくす☆きゅーと」。オリジナル素体「ピュアニーモ」にプリントアイ+植毛ヘッドの構成で、毎年のコンセプトごとに髪型や衣装を変えた新作モデルがリリースされる。
公式サイトより、同じくピュアニーモボディ使用の1/6「サアラズ ア・ラ・モード」シリーズ。00年にフィッティングモデル用に少量販売された、同社初のオリジナルドールから発展した。画像は新シリーズ「Pink!Pink! a・la・mode SAHRA」第1弾モデル。
アウトフィットも毎月新作が販売され、Webカタログも随時公開。新作情報は公式ブログなどで発表され、多くは店頭・各種通販サイトで予約受付。
人気新作は早期に予約が締め切られる場合もあるが、最近は予約在庫も発売後の店頭在庫も余裕がある印象で、初めての人なら一度店舗を覗いて損ナシ。
店舗は秋葉原・湘南・大阪・名古屋にあり、店頭では一部他社ドールも取り扱っている。
公式サイトより。一昨年より展開中の、オリジナル素体「ピコニーモD」(手足がデカい)を使用した1/12シリーズ「Lil’ Fairy~ちいさなお手伝いさん~」。小さくて迎えしやすいぶん、非常に仲間を呼びやすい。
公式サイトより。1/3ドールは50cmオビツボディ又はオリジナルのAZO2ボディを使用し、「Black Raven」「ELLEN」「Happy Clover」といったブランド別に新作を展開。画像はファンタジー的世界観を持つBlack Ravenの新作「50Amane(あまね)/The fate of blaze~彷徨える魂~」。
公式サイトより。キャラクタードールは1/6、1/3を中心に展開。龍ヶ嬢七々々さんが出るなら『アブソリュート・デュオ』のユリエちゃんが出てもよかったと思うのですが読者諸兄はいかがお考えでしょうか。
ボークス
おいアゾンのキャラドール似てねえの多いな!? とお嘆きの方はドルフィードリーム(DD)にもチャレンジ。
DDは女性ユーザーの多い同社のスーパードルフィーに対し、男性向けにアニメ・ゲームキャラを再現した完成モデルを展開するソフビ製ドールシリーズ。
素体はオリジナルで60cm級のDD・DDdy(ドルフィードリームダイナマイト)、50cm級のDDS(ドルフィードリームシスター)、40cm級のMDD(ミニドルフィードリーム)に分かれ、最近の新作モデルの多くはDD、DDSボディを使用している。
公式サイトより、今年2月~4月に受注予約を受け付けていた「雪ミク」。13年に受注販売された「初音ミク」でDDを知った人も多いはず。
販売方法はイベント&店舗・通販でのアフターイベントにおける限定販売+数量限定受注に限られ、購入には行列に並ぶ体力と運が必要。大多数のユーザーは初音ミクなど期間限定で受注生産される一部モデルを狙うのが無難かも。
公式サイトより、ドールズパーティー33で限定販売された『ソードアート・オンラインII』の「シノン」。『アイマス』『マクロスF』などメジャータイトルが中心ながら、『機巧少女は傷つかない』夜々や『シャイニング・ハーツ』メルティなど、へえ?というキャラもたまにDD化される。
もちろん、オリジナルヘッドのスタンダードモデルは常時販売されており、ボディだけ買ってイベント・ヤフオクなどで出品される個人製のカスタムヘッドと組み合わせる手もあり。
店舗に充実したメイク用品とヘッドパーツを購入してメイクカスタムに挑戦してもよし、キャラクターモデルにこだわらなければ楽しく付き合えるシリーズです。
ボークスホビー天国ウェブより、スタンダードモデル一覧。筆者は今年始めに欠品の「MDDレナ」を予約して3ヶ月待ちましたが、現在はどの子も在庫が揃っています。
PARABOX
ところでドールって高いっすね?とビビり気味な人は、大きい子でも3万円台で収まるPARABOX。オリジナルヘッド素体を多数ラインナップし、各サイズのボディ素体はじめパーツ類やカスタム用品はかなりの充実度。
公式サイトにはドールビギナー向けの読み物コンテンツが充実しており、カスタム入門者なら必見(ただしサイトの構成はファンから迷宮と呼ばれるほど散らかり気味)。
公式サイトより、オリジナルの「PARA DOLL」たち。全体に写真の撮影がざっくり気味で、一見「造形微妙かな?」と思いがちだが、「実物を見たら意外と可愛かった」という逆撮影マジックがよく報告されている。
ヘッド造形はリアル系からアニメ系まで幅広いが、全体的に飾り気のない素朴な雰囲気。完成品モデルを購入時にウィッグやアイを自由に変更可能で、メイク済ヘッドの単品販売があるのも他メーカーにない特徴。店頭のパーツバラ買いオンリーでとりあえず一体作ってしまえるのはここならでは。
中野と武蔵小杉にある店舗では完成品モデル以外全商品が常時15%オフとお買い得なので、安価にドールでガシガシ遊びたい人にはイチオシです。
筆者の家にいる、ディーラー製の姫姉ヘッドカスタム。PARABOXのアニメアイとウィッグ、オビツ50cmボディ骨格+オリジナル外皮の45cmオリジナルボディを使用。
錬金術工房
国内キャストドール黎明期から活動する原型師・荒木元太郎の個人ブランドで、40cm前後サイズのキャスト製ユノアクルスシリーズを公式サイトで受注又は在庫販売。
流麗なボディラインで年季の入ったドールファンを中心に人気が高く、比較的価格も控えめだが、自身で組み立てとメイクを行う必要あり。在庫も現在本体セットは品切れで、ハードルはやや高めかも。
ホビージャパンがたまに誌上販売を行うユノアクルス・ゼロ、セキグチが販売するプリントアイタイプのユノアクルス・ライトといった派生シリーズもある。
ホビージャパン公式より、「U-noa Freak3」で誌上受注販売された「ユノアクルス・ゼロ 2014」。
ウィズ
オビツ50cmボディとオリジナルヘッドで構成されたビジュアドールシリーズを公式通販などで常時販売。なかなかの造形で4万ポッキリ、予算をおさえたいなら候補に入れる価値アリ。
このドールに豊崎愛生、寿美菜子、梶裕貴といった人気声優が声をあてた『ドーリィ☆バラエティ』という番組もあり、『オーマイキー』や『Kawaii! JeNny』といった人形コメディが好きな方にオススメです(ニコニコで見られます)。
公式オンラインショップより「葵木 空 Basic」。おすましキメてますがCV豊崎愛生の関西弁キャラです。
QUARANTOTTO(アルカディア)
オビツ50cmボディ骨格にセクシーなオリジナル外皮パーツを組み合わせた、Angel Philiaというイカしたネーミングのシリーズを通販又はアゾンなどで店頭販売。
2013年に株式会社やまと販売のvmf50から移行したシリーズで、RealArtProjectという別サークルからは更に過激なモデルも販売中ですが成人向けのため詳細は措きます。
公式サイトより。オリジナル外皮パーツは在庫少量ながら通販で単体売りされており、巨乳パーツなどは人気が高く激戦傾向のようです。
ママチャップトイ
いや~、やっぱちっちゃい子のほうがいいッス! という人は、1/6サイズのオビツボディ+植毛オリジナルヘッドのちっちゃなもこちゃんシリーズ。
販売形式は不定期に受注生産、随時通販に少数入荷、イベントで限定&在庫販売など。超マニュファクチャ。怪獣芸術家ピコピコ氏デザインの着せ替え怪獣人形なんかも販売してます。
公式サイトより。「ちっちゃな女の子」、「ちっちゃなBOY’S」などの派生シリーズも存在。
カルチャージャパン
DD系のアニメ造形をしたオリジナルヘッド+ソフビ製素体にカジュアルな衣装がセットのスマートドールを公式サイトにて納期4週間前後で予約受付。
可動性よりも関節部やプロポーションの美しさを重視したボディで、設計思想についてはサイトにたくさん書いてあります。現在は末永みらいと夢乃きずなの2モデルで、価格は税抜6万円。
公式サイトより。やたら材質のよさ気なアウトフィットはドレスなどが追加製作されていますが、現在は本体購入者にのみ販売中とのこと。
DOLLCE
秋葉原のすみっこに実店舗を構えるDOLLCE(ドルチェ)は、オビツ11ボディ+オリジナルヘッドの「ミニスウィーツドール」(通称あまむす)、ボディまで完全オリジナルの30cm「ヤミー!スウィーツドール」をラインナップ。
月一ぐらいのペースで店舗・通販で少数限定販売がなされるが、わりと瞬殺でお迎え難度は高め。公式ブログで販売情報をチェックするか、アゾンでの委託販売やワンフェスなどでのイベント販売を狙うべし。
公式サイトより。4月ネットショップスペシャルのあまむす新ヘッド「リコリス49&50」。アウトフィットは主に制作サークル「恋鞠堂」のドレスを使用している。
オビツ製作所
ソフビ製カスタムドール素体の定番、オビツボディシリーズを他社に提供する傍ら、稀に50cm級オリジナルドールも受注生産。
最近はエフェクトパーツやフル稼働キューピー人形などに力を入れている模様。オビツ製品はアゾン、PARABOXの店頭に揃っている。
公式サイトより、受注生産の「48MY-001 MAFUYU(まふゆ)」。欲しかった。最近はオビツ11ボディのチビカグヤなどを販売中。
その他、女性なら「ruruko」「momokoDOLL」「プーリップ」「ブライス」「FR Nippon」ほかファッションドール系も見過ごせませんし、アゾンで販売が開始された「キキポップ」やリボルブの「REVdoll」、アレゲな方面では東京ドールのシリコン製シームレスボディドールやリビドールなどなど……更に個人製のものも含めれば膨大な数にのぼります。
受注や限定販売が多く再生産も稀なこの界隈での買い物は情報が命。気になっていたあの子の販売終了に気付いて泣きを見る前に、ここで紹介した各メーカーのリリースを日頃からちょくちょくチェックしておくことが肝要なのです。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。次ページでは余談と参考写真を。
余談:どうしてこんなに増えるのかよ
筆者のデスク上の風景。
些末事ながら筆者のお迎え歴を明かしますと、MSD(ミニスーパードルフィー)を初お迎え早々に海外製キャストドールにも手を伸ばし、去年11月末に到着してからタガが外れてしまったようで、「小さい子が一体増えたところで何も問題ないよねっ」という意味の寝言を断続的に三度繰り返してリルフェアリーの三体を立て続けに購入。
事務所の徒歩圏に秋葉アゾンがあったのが運の尽き、大晦日に蔵出しの50cmアリス、元日に限定リプーを衝動買い。
行く年も来る年も何やってんだよ……と遠い目をしている暇もなく1月12日のドールショウで好みのカスタム姫姉ヘッドを発見、帰りに武蔵小杉PARABOXで買った素体やウィッグと組み合わせてからは完成品へのこだわりがなくなり、ヤフオクに張り付いてカスタムヘッドを物色開始。
DDヘッド、オビツ21ヘッド、オビツ11ヘッド、ついでに造形ドハマりなアリスのDS限定Ver.と落とすうちにあっさり所持数2桁をオーバー。
仕事が煮詰まるとアゾンに逃げる習慣がついたのが災いしてえっくす☆きゅーとの子が2月中に3体増え、LUTS、Leeke Worldと海外製も数を増す中、MDDレナも到着して脅威の18体に。
「あ、自粛しよう」という決心はアゾンの猛攻の前に脆く、みうところんと3体目のリプーと天音を迎えて現在は22体。あ、これただ単にアゾンに貢いでる人だ……
「Lil’ Fairy ~ちいさなお手伝いさん~/リプー」。
「Lil’ Fairy ~ちいさなお手伝いさん~/エルノ」。
「Lil’ Fairy ~ちいさなお手伝いさん~/ヴェル」。
「1/12 Lil’Fairy~ひつじ年のこひつじさん~/リプー(アゾンダイレクトストア限定ver.)」。
「Lil’ Fairy ~プリミューレ妖精協会~/リプー」。
「えっくす☆きゅーと10th Best Selection/Princess Chiika(ちいか)~ツバメにのって~(にっこり口ver.)」。スーパーロングの髪の毛が撫で甲斐アリ。
どうしてそんなに増やすのかよ
安い買い物でもなし、ドールの数が『シスプリ』を超えないかヒヤヒヤしていたのは本当ですが、気がつけば『ベびプリ』を凌駕していたのもまた事実。
ただただ数を増やして愛でるばかりで、メイクカスタムも服の自作もドールハウス作りも撮影もあまり気乗りせず、人形者にあるまじきドライで淡々とした沼への浸かり方で、「なんで増やすの?」とはよく友人に問われます。
「最初の子ひとりだと寂しそうだったから…」なんて常套句は手前の人恋しさあってこそ。そこでお茶を濁さずはっきり言えば、オタ特有の厭人癖とリビドーを受け止める存在として、「喋らない女の子っていいな」とか、「洋服から顔かたちまで全部が自分の思い通りになる女の子っていいな」とか、「自分は内面のない、自我を自由に投影できる女の子じゃないと愛せないんだな」とか、言葉にすると最低だけど至極率直な欲望の遣る方になってくれるからなんですよね。
ドールを自己表現の一つとしてファン同士交流するのも楽しいものですが、それでも多くのドールユーザーは人形と一対一で付き合う時はそれぞれ自分の一人遊びのグロテスクさとひそかに向き合っているはずと、勝手に想定しています。
筆者の場合は美少女ハーレムアニメにばかり慣れ親しんだ育ちの悪さによるアレで特に高尚な悩みでもなく、将来ふらっと等身大という深淵に足を踏み外しそうなのですが……。
人に胸を張れなくてもいい、ひとり静かに嗜む趣味としてドールを始めてもいい。そういうようなエールを筆者のような友達のいない人形者予備軍の方たちに送ったところで、今回は筆を擱こうと思います。
「えっくす☆きゅーと10th Best Selection/Classic Alice Chershire cat AIKA(あいか)(ぽよ口ver.)」。
「えっくす☆きゅーと10th Best Selection/Classic Alice Tick Tock Rabbit HIMENO(ひめの)(おすまし口ver.)」。
クマショックもできる!
「えっくす☆きゅーと10th Best Selection/Miu(みう)/Blue Bird’s Song II(ノーマル口ver.)」。
「えっくす☆きゅーと10th Best Selection/SWEET PUNK GIRLS!/KORON(ころん)(ムニュ口ver.)」。
「50Amane(あまね)/The fate of blaze~彷徨える魂~(アゾンダイレクトストア限定ver.)」。
「48Alice(アリス)/Time of grace(通常販売ver.)」。
最後に、そんな薄暗いドールライフを送る際の注意点をひとつ。所有者を中心点としたドールディスプレイには限界があり、常に20体以上の人形に見つめられていると人は動けなくなります(ページ最初の画像を参照)。
筆者は気が付くと手近な子の髪の毛を延々と撫でてしまったり、ふとしたときにひとりずつと順番に目と目を合わせていってしまい、四六時中仕事にならず結局配置をバラけさせました。
ジオラマやドールハウスを作って同スケールの子同士で固めるなど、結局は人形視点でのディスプレイにせざるを得ないので、筆者のように部屋が狭い方はご注意を。この注意、誰の役に立つんだ……?
ということでまた次回。ところでこの連載、どこに需要があるんでしょうか?