※本記事は「mitok[ミトク]」に掲載した記事の再掲載・転載版です。テキスト、画像いずれも2015年初出時のものとなっております。あらかじめご了承ください。
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入門者向けドール情報をお送りする連載第4回。前回まではお迎え前の人を対象にドール本体やショップの紹介を行いましたが、今回からはいちおう所有者向けに、ドールのメンテナンス方法やちょっとしたカスタムについても踏み込んでいきたいと思います。
女の子は髪が命とよく申しますが(前時代的な物言い)、それはドールにおいても同じこと。髪が樹脂成形ではなく合成繊維でヘッドと別物に取り扱われることがドールの大きな特徴であり、おおまかにフィギュアと一線を画する点でもあります。
「手入れが大変そう」というイメージはありますが、手前の髪はバリカンで丸刈りにしてる無精者の筆者でもなんとかなってるので、今回は簡単なドールヘアのお手入れ方法と必要なアイテムその他についてまとめてみました。
※ウィッグを外したハゲ状態の画像などがあるので苦手な方はご注意ください。
そもそもドールウィッグとは?
無毛のヘッド素体に被せて使用するかつらを一般にウィッグと呼称。1/3~1/4スケールのキャスト&ソフビドールは大多数がウィッグ式ですが、アゾン50cmシリーズなど一部植毛式のヘッドも存在します。簡易に交換可能ながらヘアスタイルごとに大きなイメージチェンジが期待され、ドールのカスタム性を担う一要素として重要な位置を占めています。
モデルにはディーラー様製の眠り姫開眼カスタムヘッド+PARABOX40cmボディの子を使用。最近増えました。現在はLITTLE MONICA製の強めのウェーブがかかったウィッグを装着していますが……。
外すとハゲになってます。このヘッドの頭囲は8インチ程度。ウィッグはヘッドサイズ別に販売され、1サイズずれるだけで着用が難しくなります。
ウィッグには固定材が必要。この子にはPARABOX製のメカニカルファスナー(マジックテープ)を使用しています。
こちらはボークス製「ピタッとウィッグ」を使用中のヘッド。PARABOXのメカニカルファスナーのほうが安価ですが、使い勝手はこちらのほうが上かも。気をつけないと着脱時に髪を引っ掛けて毛先をアホにしちゃう欠点もありますが……。
ウィッグは一般に、ウィッグキャップとそれに縫い付けられた髪束(ウェフティング)で構成されます。キャップの内側にメカニカルファスナーのフックを貼ってます。つけてるヘアピンは百均のものです。ヘッドに被せるときはキャップを裏返し、前髪の位置から合わせるのが確実かと。
再装着。着脱して髪が乱れてしまいました。普段撫でたり飾ったりしてる分には気になりませんが、撮影時などは最低限整えてあげたいところです。ただ、ショートやストレートならさくっと櫛で整えられますが、ウェーブかかってたり縦ロールだったりすると大変なんですよね……ということで、次ページからはお手入れに使うアイテムと簡単な整え方を紹介します。
使いやすいものをチョイス! おすすめのお手入れ用品
筆者がドールヘアの手入れに使用する主なアイテム。はさみ、スプレー、ワックスと色々入り用になりますが、こだわらなければくしだけでも十分です。
- カットに使用するアゾン製「ドールヘアシザーズ」。3,000円程度する高級はさみです。大変切れ味が良く使いやすいですが、ドールの髪以外のものを切る機会のほうが日常多い気がします。軽いカット用途には眉用はさみや梳きバサミでもOKです。
- ドラッグストアで買った人間用スタイリングくし。柄の先で植毛やウェフティングを根本から分けるのに便利です。ベストは木製や金属製のくしなのですが、プラスチック製でも別にいいです。
- ボークス製「天使のヘアブラシ」。907円する歯ブラシとして有名ですが、髪を整えるのに有用なのは確か。市販の歯ブラシで代用できますが、デザインや純正品にこだわる方は選択肢に入れてもいいかと。
- ボークス製、フルチョイス時の付属品。竹ピンブラシってやつでしょうか。クッションブラシで優しくブラッシングでき、頭皮のツボとか刺激してマッサージ効果もありそうですね。あれっ、ドール用…? という不思議な気持ちになりますが、目に余裕がありひどく絡んだ髪も抜け毛ナシにほぐせるし、静電気も起きないので便利なのは確かです。
- ドラッグストアで買ったまつ毛用コーム。軽く髪を整えるのと、ブラシで顔についたホコリなどを軽く落とせるのとで取り回しが良いです。
- ボークス製「オイルスプレー」。吹きかけてブラッシングするとホコリが防げます。アゾン製「ドールオイルミスト」のほうが安くて内容量も多かった気がします。お好みで。
- アゾン製「ドールスタイリングワックス」。前髪にクセをつけて分けるときなどに便利です。ボークス製「ドルフィーウォーターワックス」もあります。
- 霧吹き。水で濡らすだけでわりとまとまるので、オイルスプレー使うのもったいないなーとケチりがちな人はコレで。画像は「フルプラ ダイヤスプレースウィング500」で細かい霧が出ますが、別に百均のものでいいです。
前髪の分け方だけで印象は変わるので、くしも目の細かさなどで使い分けてみるのが吉。画像は植毛ヘッドの「48Alice(アリス)/Time of grace(通常販売ver.)」。
基本は毛先から梳かします。人間の髪より絡まりやすい化学繊維なので(そういえば筆者は丸坊主なのでここ数年まともな長さの人間の髪を触っておらずこの説明には説得力がありません)、引っかかった場合は無理に梳かず櫛を抜いてしまいましょう。ところでなんで『GJ部』の主人公はあんなに女の子の髪をブラッシングするのが上手だったんでしょうか? 思い出すたびに嫉妬します。あれはファンタジーですよね。
ボサボサになったらスプレーとブラッシング、スタイルを直すときはヘアアイロン、汚れやワックスを落とすときはシャンプー(専用シャンプーでも、人間用シャンプーや柔軟剤を薄めたものでもよし)……とお手入れ方法は様々ですが、次ページではズボラなドールオーナーでも気になりやすい、乱れがちな巻き髪の簡易的な整え方とお湯パーマのやり方を紹介します。
ガシガシ扱っても意外と平気! ウェーブヘアのざっくりした整え方
強いウェーブやカールをセットされたウィッグは形が乱れるので櫛を通せず、手櫛で直すのが精一杯。なるべく触れずに撮影時以外は外すなどの対策が一般的なようですが、筆者は撮るより触れ合うほうがドール趣味のウェイトが大きいので、構わず撫でて乱して整えるを繰り返しています。いくら気を付けていてもどうせ乱れるし、いずれにせよウィッグは消耗品だと割り切るなら、お手入れ方法も色々試してみるほうが楽しめると思います。
※生え際注意
先ほどの子の乱れてしまったウェーブヘア。丁寧に梳くなら毛束ごとに整えるのがラクですが、こうした髪型は段になって植わったウェフティングが複雑により合わさってウェーブが構成されており、それを解いて近い同士の髪の毛単位でまとめると元の髪型そのままには戻しづらくなります。このデメリットを踏まえて説明しますと……。
霧吹きで十分に全体を湿らせ、歯ブラシなど目の細かいもので毛先から整えます。ここでセットを多少無視して、乱れた髪の毛を根本から一本一本、自分が扱いやすい形で毛束にまとめ直してしまいましょう。このロングウェーブのような凝った癖のない髪型なら、カールが緩んでも再セットは容易です。
しまりのないだらんとしたウェーブになりましたが、持っていない人でも巻き髪の構造がお分かりになれば幸いです。乾かした後、ストレートスタイルにしたいならストレートアイロン、カールを再セットしたいならカーラーアイロンを使ってOK。ヘアアイロンがなければ、元のウェーブに近い間隔の筒状のものに巻きつけてもわりと直ります。母親のヘアアイロンは、使うのを躊躇われます。
ゆるめのウェーブにしたかったので、濡らして整えたときにへたった感じをベースに、多少巻き癖を直して完了。
こんな感じで、まあ霧吹きと櫛だけでもわりとなんとかなるってことです。「面倒そうやなあ」と足踏みしてる方の参考になればと。ちなみに、縦ロールはこんな感じでやろうとしたら一日潰しても直らなかったので、ウィッグごとに柔軟に対応していただければと投げておきます。
こりゃダメだ! というときはお湯パーマ
ここまで一般的な耐熱ウィッグを前提に書きましたが、トヨカロンなどの非耐熱素材ウィッグは、ヘアアイロンやドライヤーを使ったり高熱のお湯に浸けるとチリチリになってしまいます。筆者は二度ほどやらかしました。商品仕様をよく確かめた上で、このウィッグ気に入らねえな……という場合、よく知られるアレンジ方法としてお湯パーマがあります。
お湯の熱で髪の毛のクセを取る方法です。水受けの上に割り箸などでウィッグを固定し、70~80度程度のお湯を頭頂からかけます。耐熱ウィッグなら電気ケトルで沸かした100度前後のお湯でも大丈夫です。今回はイベントで買った癖の強すぎるアウトレット品をストレートに直します。
ざっと直毛になりました。更に毛先を伸ばしたい場合は、水受けに溜まったお湯に浸けて櫛を入れたりします。カールを作る方法などもあるので、詳しくは調べてみてください。
以上のやり方で髪の簡単なメンテナンスはOK。ですが、「前髪だけ長さが微妙なので調整したい」といった細かいアレンジの場合、やはりヘアカットが一番です。失敗が怖くて初心者には手が出しづらいところですが……次ページでは比較的安全なヘアカット方法をご紹介します。
植毛ヘッドの前髪カットに挑戦!
ウィッグは交換すればまあ済みますが、植毛ヘッドはやらかすと再植毛するしかないので、ヘアカットは二の足を踏んでしまいがち。髪切る技術とかないしなあ……という人も、まあ物は試しに一度やってみましょう。
ソフビ製ヘッドに直接髪が植えられているのが植毛ヘッド。アゾンドールは大体コレです。アリスはどうも前頭あたりの植毛が薄く、注意しないと頭皮が透けがちです。
今回カットするのは「48Alice(アリス)/Time of grace(2014ELLEN’S Garden開催記念ver.)」。さっと分ければ違和感はないのですが……。
櫛を入れるとこんな感じ。前髪が厚くて野暮く見えることが多いので、調整することにします。ヘアスタイルにもよりますが、ウィッグも植毛ヘッドもユーザーごとに調整できるよう前髪はぱっつん気味な商品が多いようです。
髪は等間隔に植わって層状に重なっています。ヘアピンで上層の前髪を留め、一番下の層にある列から順番にはさみを入れます。これなら切りすぎても、上層の髪の毛が被さってごまかしがききます。
マスキングテープを貼って層を区切ってもOK。1/6ドールなどはこのほうがやりやすいかも。はさみは横に入れず縦か斜めに入れること、櫛などでまめに切った髪を落とすことさえ心がければ、経験ゼロでもなんとかなります。
微調整は必要ですが、まぶたが出るようになりました。眉を透かしたい場合、最上層から何層か下の段で梳きバサミを入れればOKです。
以上、ネットとかで色々調べて試してみて一番ラクだったのはこれかなあ、というドールヘアのメンテナンス方法でした。うっかりラフに取り扱って何本か毛が抜けたところでそう問題もないわけですし、ウィッグの厄介さがイヤだなーと思ってる入門者の人に「ふーん」と思ってもらえましたら幸いです。
1/6ヘッドの植毛方法とかも入れたかったのですが、書いてから内容入れ込み過ぎたのに気づいたのでそれはまた次回に。そのあたりからは慣れや試行錯誤が必要なカスタム作業になるので、トーシロの筆者には荷が勝ちすぎるところですが、なるだけ頑張りたいです。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。